上海市の一生活者として
- AKIBA BC
- 2019年1月1日
- 読了時間: 6分
更新日:2019年3月5日
上海市今昔の感
私は、1991年以降、日本からの出張ベースで中国訪問の機会が増え、韓国駐在生活6年間以前の2004年から2012年の8年間、上海市に駐在しておりました。 慣れ親しんでいた第二の故郷でもあるのですが、6年の不在期間を経て戻りますと、様々な生活の場面で相変わらずの変化の速さを改めて実感しています。
そんな上海市の今昔を意識しながら、街の簡単なご案内と現在の上海市での生活者としての暮らしの断片を紹介させていただきます。(カッコ内は現地音に近いカタカナ表記です)

浦西(プーシー)と老上海(ラオシャンハイ)
上海市は、常住人口2,400万人を超える中国最大の都市ですが、市の中央を流れる長江の支流「黄浦江(ホワンプージャン)」で西側の「浦西」と東側の「浦東(プードン)」に分かれています。
西側の浦西が旧市街区です。 1842年の南京条約で開港以来、共同租界、フランス租界として発展したエリアで、ヨーロッパ調の新古典主義建築物に代表される「外灘(ワイタン)」地区は、19世紀から20世紀初頭にかけて中国最大の金融都市としての成長を遂げました。 浦西エリアには1920年代~30年代には「魔都」とも呼ばれた、ナイトクラブ、ショービジネス、ファッションなどの文化発展を指す「老上海」の名残を残す租界時代の建築、街並みが今も多数残っており、文化大革命以降には荒んでいましたが、最近ではレストランなどとしてシックで高級なお店に生まれ変わったところも増えて街の魅力を上げています。
上海市を代表する商店街である、南京路(ナンジンルー)、淮海路(ホワイハイルー)があるのも浦西エリアです。近年は、どちらの通りにもグローバル著名ブランドの旗艦店が続々と進出して軒を並べています。 一方、明時代からの庭園である「豫園(ユウユエン)」もこのエリアにあり、お隣の道教のお寺「城隍廟(チェンホワンミャオ)」と合わせて、上海にある古い中国文化に触れられる地区として旅行客を集めています。

浦東新区
上海市としては経済開放以降に新開発されたエリアが黄浦江の東側に広がる浦東新区です。 1992年に中国初の国家級新区として成立しました。 黄浦江で向かい合う位置となる外灘の租界的な街並みとは対照的に、超現代的な摩天楼が林立する陸家嘴(リュウジャアズイ)地区には、「東方明珠(ドンファンミンジュー)」テレビ塔や、超高層ビルとしては中国で1位の高さ【632m】の「上海中心」などの目を引く建物が連なり、まるで映画の中の未来都市の様な景観を誇っています。 2002年に開通した営業最高速度430km/hで浦東空港と市内を結ぶリニアモーター列車は、超高速運転交通機関として一般営業を行っている世界で唯一の路線です。 2016年には上海ディズニーリゾートもこのエリアにオープンしました。
上海の日本人生活者
上海市には長期在住の日本人が約4万5千人、短期滞在者を含めると常時、約10万人の日本人が暮らしています。日本人学校も浦西の虹橋(ホンチャオ)校【小学校のみ】と、小、中、高のある浦東校の2校があり、それぞれの学校の近辺エリアに日本人が多く居住しています。日系のスーパーも多数あり、日本の食材も充実しています。 中国には、工場進出している日系メーカーも多く、日本酒、ビール、醤油、ラーメンなどなど、日系ブランドの食品は中国国内製の品物で事足りてしまいますし、お値段も日本からの輸入品に比べると割安です。 しかし10年前に比べると人民元の為替レートがだいぶ高値となっていることや、諸物価の値上がりも著しく、生活費全体は嵩んでいます。
互聯網+(フーリエンワンジャ)とBAT
ここ最近の、中国、上海の生活者の暮らしぶりは「互聯網+」、中国外では「インターネットプラス」とも呼ばれている、中国国家戦略で激変しました。この戦略は、インターネットとあらゆる産業とを連携し、従来の産業の新たな発展を目指すことで2015年の全国人民代表大会で提出されました。
互聯網+の推進をリードする3大企業が、百度【バイドゥ】、阿里巴巴【アリババ】、騰訊【テンセント】で、3社の頭文字からBATと命名され、それぞれ、検索エンジン、EC&決済【支付宝(ジーフーバオ)】、SNS【微信(ウェイシン)】と異なるサービスを主力事業に成長し、いずれも中国では人々の生活に欠かせない存在となっています。
中国では7.5億人をこえるインターネットユーザーの95%以上がスマートフォン【スマホ】からの利用です。 中国生活者一人一人のスマホと個々人の銀行口座とがリンクされたQRコード決済機能の応用から、日常の生活のあらゆる場面で、スマホ無しでは過ごすことが難しい社会になってしまいました。
ある日の例ですと、朝、通勤の地下鉄駅までは近所の道端に置かれたシェアリング自転車をスマホで開錠して乗り、駅のゲートもスマホスキャンで通過、ホームでは最近増えた新型自動販売機からスマホで飲料を購入、到着駅からのタクシーは、駅前の乗り場には客待ち車などいないのでスマホから滴滴出行(ディディチューシン)で呼び出して乗車後にスマホで支払い。 ランチのレストランではスマホSNSのお店HPからメニューを呼び出してオーダーもそのままスマホからインプットして、食後はプロモーションクーポンの割引を利用しながらオーダー記録で自動計算された金額をスマホ清算、同時に顧客サービスポイントもスマホに貯めます。 運転してきた社用車はスマホで駐車場料金支払いを出庫前に済ませてナンバー自動読み取りの無人ゲートを通って帰社。 仕事の後はスマホで割引購入済み証明のQRコードでチケットを発券して映画鑑賞、などなどと。
このように、ほとんどの生活場面でスマホが必需品となり、外国人旅行者のように、中国の銀行口座とリンクしたアプリを使えない生活者には不便なことも増えました。 空港に到着しても、タクシーには乗れないような事態になりかねませんし、中国国外で発行のクレジットカードは使用できないお店や場所も多く、両替した現金に頼る状況になりますが、現金精算は面倒で敬遠する店もあったり、交通カードのチャージ機もすでに現金では使用できません。
将来的には、中国で先行浸透している、QRコード決済や予約オーダーシステムがグローバルでも共用できるかもしれませんが、その世界をリードしているのもBATなのかもしれません。
生活者のマナー変化
スマホ以外にも互聯網+での変化としては、悪名の高かった上海市の自動車運転マナー改善も顕著です。赤信号でも人ごみの横断歩道へ平気で右折侵入していた自動車が、歩行者がいる時はきちんと手前で停車して待つようになったのです。高速道路でも速度違反の車が明らかに減りました。 この変化は、CCTV【監視カメラ】の漏れの無い設置と、登録ナンバー読み取り機能と連動した自動違反取締システムの成果です。
この先には、CCTVと個人顔認証が連動した個人監視強化システムが導入されれば、例えば、未だによく目にする銜えたばこ歩きや、ペットの排泄物放置なども無くなるかもしれません。
自動監視による生活マナー改善が、真の生活者モラル改善とも繋がるのかは私にはまだ不明ですが、日本からですとフライト2時間台で到達します上海市ですので、初めての方も最近ご無沙汰の方も、皆様ご自身でぜひご視察されませんか?
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