top of page

生活者視点からの中国環境対策進化

  • 執筆者の写真: AKIBA BC
    AKIBA BC
  • 2019年3月1日
  • 読了時間: 4分

更新日:2019年3月7日


ree

 私が、昨年まで6年間暮らした、韓国ソウル市では本年(2019年)に入り、「PM2.5」による大気汚染が過去最悪水準となったそうですが、「PM2.5」は中国から飛来したとの見方が韓国では強く、一方、中国政府は「韓国内で排出されたものだ」と反論し、平行線になってしまっているとのこと。


 中国からの飛来の真偽は不明ですが、昨年までの過去6年の韓国在住記憶では、年々とソウル市の大気汚染が酷い日が増えていったように感じていましたし、上海に戻ってからは、大気汚染はたまに悪い日もあるものの、ソウルにいたころよりは気にならないようにも感じております。 これは、この5~6年の間に、中国の環境対策が進んで改善の方向へ舵を切った成果が出てきているのかもしれません。


 中国政府は、2016年から始まった「第13次5カ年計画」文書に、国家発展の理念として「生態文明」(エコ文明)、「美麗中国」(美しい中国)を掲げています。 また、2015年末にパリで開かれた気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、2030年までにGDP当たりのCO2排出量を2005年より60%~65%削減、非化石燃料が一次エネルギー消費に占める割合は20%前後、森林備蓄量を2005年より45億立方メートル増加させるなどの自主目標を提示しました。 一方で、米国は2017年にパリ協定から離脱しました。 米国が温室効果ガス削減の取り組みを後退させるのと入れ替わりに、中国が世界のリーダー的役割を果たそうとしているとも言われています。

 生活者的な視点から中国の環境対策に関係した最近の変化を観察しますと、街中でのEVの増加が目立ちます。 今や、化石燃料車を運転していること自体がすでに時代遅れのイメージ、と言っても過言ではないかもしれないほどです。 中国EVの国内販売を促進させる背景(政策)の一つに新エネ補助金制度というのがあります。 1回の充電続航距離が250km以上の電気自動車購入の場合(プラグイン・ハイブリッドは除外)、1台ごとに、(2019年~2020年は)補助額3,300RMBが販売店へ支給されます。 また、上海では、EV車のナンバーは無償(一般のナンバーは競合入札制で現在は10万RMB以上)という制度もインセンティブも増加の一助になっているようです。


 中国でのEV急増関連の記事等を見ていくと、2013年から2017年間のわずか5年間で、EV保有台数の世界シェアを6%から40%まで拡大させたとのことです。 世界エネルギー機関(IEA)が毎年発行しているGlobal EV outlook (2018)によると、 2017年末の世界のEV・PHEV保有台数は310万台でした。 国別内訳では中国が120万台、米国が74万台、日本が21万台、ノルウェーが18万台となりました。 中国が圧倒的なTOPシェアで世界をリードしています。 それに対応する充電スタンドの普及状況も見ると、世界全体の急速充電器数が、112,000のうち、中国がその74%を占めています。 


 中国政府は2020年までに、充電スタンド1万2000カ所、充電設備480万基を設置する目標を掲げています。2015年以降は、新築の居住用建築物の全ての駐車場に、EV充電設備を導入するか、導入スペースの確保を義務付けてもいます。既存の建築物であっても、大型の公共建築物や民間駐車施設では全体の駐車台数の10%以上に相当する面積をEV関連設備用のスペースとして確保する規則も導入されました。


ree

 2015年に発表した産業中期戦略「中国製造2025」では、新エネ自動車産業をスマート化や低炭素化に推し進められる第三次産業革命のシンボルとして位置づけ、国家産業競争力の核心的利益として育てていく方針を打ち出しました。 環境保護の強化と先端産業育成に舵を切っている中央政府の意図をくみ、大気汚染対策とEV産業誘致の両立を狙う地方政府の支援も無視できない推進力となっているようです。融資から用地提供、EVの設計、認証、生産、販売などのプロセスにおいて、さまざまな支援策が受けられるため、ベンチャー企業であっても製品の開発から実用化までのコストは、他の国や地域に比べて低いといわれています。 


 中国デジタルの雄、BATもそれぞれEV企業への投資を加速しています。 アリババによる、Xpengへの投資。 百度の、上海に拠点を置くEVメーカーのNIOに投資。 WeChatのテンセントも、NIOへ巨額の資金を投じている他、テスラの株式の5%も買収しています。 中国のEV社会への変革は、ますます加速していくことでしょう。 

 
 
 

Comments


ブログ: Blog
bottom of page